劇場50分アニメは満足度が低いという話

この3連休中に劇場アニメを2本観た。
一つは『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』、もう一つは『ガラスの花と壊す世界』
両作品とも50分と短く、その尺が原因で満足度が低くなってしまった。
もしくは原作の良さを殺してしまったのではないかと感じた。

『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』の印象



「傷物語」公式サイト - 〈物語〉シリーズ

『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』は元々1本の原作を分割する形。
”起承転結”で表すならば"起"及び"承"の部分のみという事だ。
そのおかげで「さぁ、ここから!」っていう部分で終わってしまう。
続きの公開が1週間後とかであればまだしも半年以上も先。
原作も読んでいない。1回観ただけで強く印象に残って無ければ忘れてしまう位の月日が経つ。
3部作をトータルで270分の作品と考えれば、120分1本に収めるより原作をより深く事ができるかもしれない。
でも、それが分割され、単一の作品として観た場合はボリュームに不満が残る。

『ガラスの花と壊す世界』の印象


劇場版アニメ『ガラスの花と壊す世界』Official site

『ガラスの花と壊す世界』はポニーキャニオン主催の「「アニメ化大賞」なる企画から立ち上がったもの…らしい。

「アニメ化大賞」大賞作品が「ガラスの花と壊す世界」として2015年劇場公開予定 - GIGAZINE

上記の記事によると「創作ユニット「Physics Point」によるシナリオ&イラストレーション作品」とあるので、原作が先に一つのメディアで完成しているわけではなく、このアニメの為の原案をブラッシュアップして映画化された作品なのだろう。
細かい内容には触れないが”起承転結”でいうと”起”と”転”と”結”のみで”承”の部分が殆ど割愛されている、もしくはダイジェスト化されている印象だった。
先にも説明した様に、この企画の為のオリジナル作品なので、キャラクターや世界観が前段としてあるわけでもなく、それを理解させつつ出会いと別れの物語をやるにはあまりにも短い尺だと感じた。上映終了後に他の客の反応を伺っても首を傾げている人が多かったので、この感覚は自分が感じた特有のものではないと思う。

なぜ50分という尺なのか

何故、近年この50分という尺のアニメ映画が多いのかを考えてみる。

1.元々はOVA作品だった
OVAの作品がパッケージの前にプロモーションも含めて劇場公開をおこなっているケース。 プロモーション目的もあるのだろうが、OVAのセルだけではなく劇場公開を行う事での収益が見込めるようになったのは良い事だろうと思う。
2.上映期間が2週間という期間限定
シネコンが増え、劇場が増えた事により。スクリーンに比較的余裕ができ、大作と大作の隙間を埋めるようにスポットで上映する事ができるようになった為。 これが直接的な要因ではないが、以下に挙げる理由を併せて考えると要因の一つなのではないかと思う。
3.上映回数を増やして回転率を上げる
アニメ映画はよく「第x週の来場者特典」として固定客のリピート率を上げる施策を行っている。 それにマッチさせる為に、より細かい時間で観客が来やすい時間を多く作る為の方策の一つなのではないだろうか。
4.資金調達の関係
簡単に言うと自転車操業。劇場アニメを100分を越えるフルボリュームでは資金調達が難しいが 分割にして公開する事で途中、途中で収益が出るようになる。また、集客の実績ができる為に、スポンサーへのアピールがしやすい。もしくはそういう事を見越した上でのスポンサードの条件になっているケース。
こんなところだろうか。色々書いているが、要は近年の映画館の都合とアニメーションの現場の都合がマッチする尺がこの50分なのではないだろうか?という話だ。


50分という尺では満足度は得られないのか?

結論としては難しいができないわけではないと思う。

同じ50分という枠で全5章(当初は4章の予定だった)となる『コードギアス 亡国のアキト』は1章の中に"起承転結"があり、サンライズらしくCGで描かれたロボットの殺陣も十分なボリュームとクオリティを用意している。とはいえ、ストーリーの駆け足な感じは否めないし、「やはり少し短いな」とも感じる。

個人的には50分という尺であるならば、ストーリー性等を排除し、アトラクション的なノリで50分間観客を振り回すだけのほうが効果的なのではないかと思う。イメージ的には少し昔に話題となった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』等がイメージに近いだろうか。観客を振り回し、疲れさせ「50分でもう十分だ!」と思わせるものであれば良いのだ。

劇場に足を運び決して安くない金額を払って鑑賞するプレミアム感は、劇場の設備だけではなく、作品の質も大きな要因となる。映画のボリュームもその一つの大きな要因であると思う。事情は察するが、観客の満足度にももう少し目を向けて貰えればと思う。